One day of the big cat * ある日の大猫サマ(3)
『Guiding Light』


真夜中に、ふと目が覚めた。
一瞬自分がどこにいるのか、わからないでいる。
開け放したままのカーテン。その間から差し込んでくるのはガーデン・ライト。
ロンドンの自宅、だ。

もぞ、と寝返りを打った。
する、とリネンが裸の腕を滑った。
身体が甘く重く感じて、自分の状態を思い出した。
けれど――――。

腕をそうっと伸ばす。
なぜか恋人は自分を窓際に寝かせることを好むから、より闇に包まれたほうへ、と。
さら、と手に触れたのは、けれど。
僅かな熱だけを含んだ、空っぽのリネン。

「……?」
とくん、と心臓が小さく鼓動を刻んだのを自覚する。
上体をゆっくりと擡げれば、するりとリネンがむき出しの肌を滑り落ちた。
まだどこか甘いままの身体が冷えないように、僅かばかり引き上げて側に寄せておく。
どこに行ったのだろう、とぼうっとした頭のまま思う。
さら、と長く伸びた髪が衣擦れのような音を立てて肩から滑ったのを耳が拾い上げた。
それ以外は、シンと静まった部屋。
カチコチと音を立てる目覚ましは嫌いだから、ソレの立てる音も無い。
眠気はまだ留まったままだから、ゆっくりと瞬いてみる。
――――何時、だろ…?

不意に。
かちゃ、と静かにドアが開く音がして。
夜気を纏った恋人が部屋に滑り込んできた。
そして真っ直ぐ、迷うことの無い足取りで音もなくカーペットを横切り。
するりとベッド潜り込んでくる。
微笑んでいるようなのが解る―――ドアを開けた瞬間より、僅かに和らいだような雰囲気。

ほわ、と。気配が戻ったことに、安心する。
また上体をリネンの上に戻せば。
そうっと伸ばされた腕に抱き寄せられる。
その重みを受け止めて、その力強さに安堵して。
少しばかり冷えた皮膚と、その下の身体が発する熱に目を閉じる。

髪に唇が押し当てられる感触に、小さく口端を引き上げた。
とろん、とまた眠りが静かに戻ってきて。
優しい腕に包まれて、意識をゆっくりと手放した。



(*実家から帰るバスの中で二矢しゃんに送ったプチネタ<笑。わんこ、何かを思い出してお電話に行っていたようです。さらんと抱かれた後の気だるさをまだ漂わせつつ、リネンだけを纏った王子が外からのガーデンライトに照らされたベッドの上で待ってたら。なぁんにも迷うことなんかないよネーわんこ、と思ってのタイトル。明かりが増幅されてキラッキラなんだろうなぁ。ス○ル望遠鏡で見たら眩しくて直視できないよなー<笑)




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