* 参拾壱 *
「ん、んぅ、」
する、と熱を優しく包まれて、セトはぎゅうっと浴衣の生地を握り緊めた。
尾骶骨辺りから、じわ、と熱が生まれて。それが一気に体中を走り抜けていく。
「ん、ぁ」
戸惑うのも一瞬で、慣れた手付きに口付けられながら追い上げられていく。
「ふ、ぅ…っ、」
じわ、と抑えきれずに零れ出るものに、泣きそうになりながらコーザの背中に指を立てて縋り。
濡れた音に思わず眉根を寄せたセトを宥めるように、耳元で、セト、と呼んでくる甘い声に、涙で潤んだ蒼で見上げる。
「あ、」
ぞく、と腰元から這い上がるぞわぞわとしたものに、僅かに身体を竦め。
それでもまた深く口付けられ、甘く舌を食まれるのに、ふ、と身体から力を抜いて男が齎す感覚に身を任せる。
「ん、ン、……うぅっ、」
ぼうっと頭の中が白くなりはじめ。ぎゅう、と腹の奥のほうが痛くなるくらいになり。
ぐり、と濡れた先端を親指で強く擦られ、ぎゅ、と絞り上げられた感覚に。とうとう堪えきれずに、身体が望むままに腰を震わせて、溜め込んでいた熱を零した。
口付けを解かれ、荒い息を繰り返しながら、初めての深い快楽に身体を震わせているセトを、コーザはそっと手で熱く火照っている脚を撫でて宥め。
「せと、」
と甘く名前を呼んで、潤みきった蒼がぼうっと見上げてくるのに、優しく微笑みかける。
そのまま目尻に口付けて、残っていた涙の雫を吸い上げ。
「声まであまいな、」
そう告げて、とくとくと早いリズムで鼓動を刻んでいる心臓の上に、とん、と口付けを落とした。
「は、」
きゅ、と目を閉じて、甘く重たくなった身体を布団に休めたセトをちらりと見遣って、平らな胸にある小さな尖りに舌を滑らせる。
「……ぅ、んん、」
ぺろ、と先端を濡れて熱い舌に舐め取られたのに、ぴくん、と肩を跳ねさせたセトが、ほんの僅かに笑みを零した。
その様子を見詰めながら、もう片方にも手を伸ばして、軽く摘むようにする。
「ふ、ぁ…っ?」
ぴくん、とまた指を跳ねさせ、セトが身体を僅かに震わせる。そのまま、小さく硬い飾りがぷっくりと赤く膨れるまで舌で転がし、歯で挟んでは唇できつく吸い上げ。もう片方も散々指で押し潰したり捏ねたり摘んだりし、真っ赤になるまで刺激を与え続ける。
むず痒いような、痛いような感覚に、セトが何度も身体を捻り。それでも優しく指先や舌で触れられれば、ずく、とそこから快楽が生まれるようになったのに、びくりと腰を揺らす。
両方を口と手で味わい、赤く腫れたように両方の尖りが立ち上がったところで漸く満足したのか、コーザが身体を落としていき。うずうずとするような快楽に、戸惑うようだったセトが、両脚を軽く広げられたのに、深い息を吐いた。
平らな腹の上まで唇で時折啄ばまれながら辿られ。その度に、セトは身体を震わせながら、甘い声を小さく零していく。
腰元からゆっくりと熱い舌先で淡い金に向かって辿られ。ひくん、と腰を揺らしたセトをそうっと掌で宥めてから、とろとろと溢れて零れていた熱い蜜をぺろりと舌先で舐め取り。
「あ、っ?」
戸惑ったような声が上がるのに構わずに、火照った熱を口いっぱいに頬張る。
「ふ、あ、あ、」
甘い嬌声が一際高く上がり。ぐう、と浮いたセトの腰を落とさせて、丁寧に舌と唇とで包み込んで、舐め上げていく。
「ん、…んぅっ、」
頭の中が何度も発光し、吸い上げられる度に快楽をより深いものとされ。セトは一気に流されてしまいそうになるのに、戸惑いを通り越して恐怖を感じ、指先で必死にコーザの背中に縋る。
けれど、止めて欲しいとは言えず、もっとして欲しいとも言えず。齎されているのが正しく快楽なのか、背骨が溶けそうに感じるのは普通のことなのか、感じていることをどう表現していいのかすら解らずに、翻弄されるままに甘い嬌声を上げ続ける。
きゅ、ときつく啜り上げられ、びくん、と腰を揺らし。快楽に一気に押し流されそうになるのを必死に押し止め、声を上げた。
「こぉざさまぁ…っ、」
コーザは構わず、掌で熱も火照った脚も堪能しながら、くぅ、と舌をきつく絡めて、強く深く吸い上げた。
あ、ぁ、と泣き出しそうな嬌声が部屋を満たし。
くう、と笑ってコーザは唇を一瞬浮かせ、腰骨をかりっと甘く齧った。腰が跳ね上がったところでまた含み直して、せと、と甘い声で促すように呼びかける。
翻弄されながらも、口内に体液を零していいものか判断が付かずに。近付いてくる限界に焦るように、セトが身体を震わせる。
「も、放し、て」
あどけないくらいの声が、切羽詰って願いを口にする。
それでも快楽を感じやすい中心部が放されることはなく。却って強く吸い上げられて、堪えきれずにセトは腰をびくりと跳ね上げさせた。
「あ、あ、んぅっ、」
蜜を男の口腔に一気に放ち。一瞬、ぼうっと快楽に呆け、けれど、もしや大変な粗相をしでかしたのではないかと、はた、と思い至り。セトは泣き出しそうになりながら、頭を擡げてコーザを見上げた。けれど、なんと声をかけていいのか思い至らず。
「あ、」
と小さく声を上げて、急いでコーザの頬に手を伸ばし。男が迷わず嚥下していたことに気付いて、う、と嗚咽を洩らし、ぽろっと涙を溢れさせた。
そしてそうっと囁く。
「I’m so sorry」
けれど、コーザは気にした風もなく、す、と自分の唇を舌で舐めて。差し伸ばされていた手に頬を寄せるようにして、じぃっと蒼氷色の双眸を見下ろし。
「Sorry for what, Seth?」
そう優しく訊き返した。
そして、ふわりと目許で笑うと、熱く火照った掌に顔を埋めるようにして、ちゅ、と音を立てて口付け、
「せと、全部寄越しちまえよ」
そう声を手の中に落とした。
はた、と困った風に瞬いたセトを見詰めたまま、ぺろ、と指先まで舌を滑らせていく。
くぅ、とセトは泣き笑いを浮かべた。そして、そのまま黙って首をふるふると横に振った。
粗相をしたのでなければ、求められたことに応じられたのだろう、と理解し。漸く、ふにゃ、とどこか気恥ずかしそうに笑みを浮かべる。
そして、そのまま両腕を伸ばして抱きつき、そうっと言葉を吐息に溶かす。
「全部、攫って」
Take my everything、と呟いたセトの頭をそうっと掌で引き寄せ。コーザは黒く染められた髪に口付けを落とし、心の底から湧き起こる愛しさを込めて告げる。
「大事にする、セト」
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