ふんわりと微笑んで幸せそうに唇を綻ばせたセトに、そうっと口付ける。
はむ、と柔らかく、初めてセトから唇を啄ばまれ。くぅ、と口端を笑みの形に引き上げながら、そろそろ、と長い脚を掌で辿って引き上げさせる。
引き寄せておいた漆塗りの箱から、茶色い小瓶を引き出して。物音に、ちら、と視線を上げたセトがそれを目にして、さあ、と頬を火照らせるのにまた微笑んで、とん、と柔らかく唇に口付けた。
何度も押し当てるだけの口付けを交わし。潤滑油を手に垂らして体温に馴染ませる。
うっとりと目を閉じて口付けに没頭していたセトが、つ、と奥に滑った感触が広がるのに、一瞬驚いたかのように目を開けてコーザを見上げた。
そのまま、軽く押して揉むようにすれば、またとろりと目が閉じられていき。代わりに溜め息のような深い吐息がそうっと零されたのに、低く笑った。

指先で馴染ませるように塗りこめながら、空いたほうの手で長い脚をさらりと辿る。
唇で僅かに反らされるようにされていた首筋を、何度も繰り返し往復して啄ばんでいき。
とろ、と甘く蕩けて熱を帯びた吐息が、時折甘い嬌声を混ぜながら薄く開かれた唇から零れていくのを耳にして、自然と愛しさが増す。
「っあ、」
込み上げ続ける快楽から何度も震える細い身体のあちこちに手で触れ、唇で辿り。快楽に未熟な身体がとりわけ震えた場所に淡い痕を残しながら、そうっと指先を収縮しだした入口に忍ばせる。
つぷ、と潜り込ませた指先の感触に、とろ、と潤んだ蒼が見開かれた。
「……っ、」
微笑み、ゆっくりと中を指先で辿れば、セトは背中にきつく指先を埋め。けれど、特に抗うでもなく、ほんのりと頬を染めて、また目を閉じていった。

時間をかけて、奥まで潤滑油を塗り込め。指一本が楽に出し入れできるようになったところで、更に潤滑油を手に取り、指をもう一本増やす。
くう、と眉根を寄せたセトの震える脚に口付けて。唇で中心部へと辿り下りながら、ゆるゆると浅く潜り込ませた指で内側を擽るようにすれば、堪えきれない風にセトが深く喘いだ。
蜜が零れ落ちた先端を軽く吸い上げ、く、と指先をもうすこし潜り込ませれば、唇を噛むようにして喘ぎ声が噛み殺され。ふ、とコーザは笑って、からかうように告げる。
「聞かせてくれねェの、」
脚の付け根を少しきつめに吸い上げ、淡い痕を残せば、やぁ、と甘えたような嬌声が零され。ぐう、とセトが背中をアーチさせた。
く、と唇でまた熱を挟み、吸い上げて。んあ、と身体を仰け反らせたセトの熱を奥まで含みながら指を、ぐ、と奥まで押し入れれば、震える声が零された。
「い、あ……っ、」
びくん、と腰を揺らせたセトを宥めるように、強弱を付けて何度も吸い上げ。そうして快楽を引き出されることに漸く慣れた身体が、また熱を帯びて震え始めたところで、小刻みに指を動かして内側を溶かすことに専念する。

「あ、ァ、ふぁ、」
ぐらぐらと揺れる頭が快楽に溺れていることには気付かずに。齎される感覚に抑えきれずに何度も震える声を零す。甘ったるい嬌声が自分のものだと気付いた時には、もう身体は熱く火照って快楽に目覚めていて。セトは今度はその声を抑えることが出来なくなっていた。
目を閉じても、目を開いても。柔らかなオレンジの光りがグラグラと頭の中で揺れ。名前を呼んでくる男の身体に指を突き立てても、身体のどこかが蕩けたように現実感を感じることができず。
内側に差し込まれた指が、ゆるゆると内側を刺激していくのに、なんとも言いようのない感覚が全身に広がっては、腰の奥辺りに熱を溜め込んでいくのにセトは深く喘いで眩暈を遣り過ごした。

キモチイイのかキモチワルイのか、判別はつかず。時折立てられる歯以外に痛みを齎すものなどなく、ただ埋められた圧迫感と大きく広げられた脚の間に感じる男の身体の熱さに、中心部を含まれ吸い上げられる感覚に、ああ、と声を洩らした。
ぐう、と波がまた襲ってきて。
「っ、ア、あ……っ、」
ぐう、と腰を揺らした瞬間に、ぐ、と内側を押し撫でられて、一気に快楽が溢れた。
「は、あン…っ、あ、あっ、」

何度も同じ場所を確かめるように擦られ。
上がりきった快楽の天辺が落ちてくる前に断続的に刺激され、身体を捩るようにして逃れようとする。
「ぁ、や、あ…っ」
これ以上感じさせられたら狂ってしまう、とパニックに落ちかかったところで、漸く動きが一旦止められ。圧迫感が退くことはなかったけれども、深く嗚咽交じりに息を繰り返して、漸く自分が泣いていたことにセトは気付いた。

身体のあちこちに、また口付けが落とされていく。
さらさらと肌を撫でていく手は温かくて、優しくて。
ふ、と深い息を吐いて意識を一度クリアにし、それでもどこかぼやける視界に懸命に目を凝らして、自分を抱く男を見上げた。
それに気付いた男が、ちら、と目線を合わせてきて。柔らかく微笑して、そうっと覆いかぶさってきたのにうっとりと笑う。
熱く蕩けた身体は、もう自分の意思ではどうすることもできず。いつの間に床に落ちていたのか、力の抜けた手をそっと引き上げられ、また男自身の手でその首に回されたのに、酷く嬉しくなる。

ぐ、とまた内側を押し撫でられ、震える吐息を零し。こういう時にはこの国の言葉ではなんと言うのだろう、と。不意に語りかけるべき言葉を見失って、セトは目を瞬いた。
なに、とでも言う風に合わされた目線を見上げ、掠れる声でそっと囁く――――I love you.
音にしてしまえば、頭がどんなにぐらついていても、酷く幸せな気分になって。
ふわ、と零れるままに笑みを刻めば、同じように微笑んで目許を緩ませた男がそうっと唇を合わせてきた。

とろ、と舌先が合わせられ、夢中になって味わうようにそれに意識を取られかけ。
また、ぐ、ぐ、と内側を押し撫でられて、身体を震わせた。
「は―――あ、ア」
ふわ、と視界がまたぶれて、淡い幕がかかり。
目を閉じると同時に転がり落ちていく涙に、自分がまた泣いていることに気付く。
ぐ、と腰の奥で生まれた熱が、あっという間に全身を伝い。押し止めることも出来ずに熱をまた零したことに、セトは悲鳴に似た嬌声を知らずに上げていた。

くう、と引き抜かれる指の感覚に、背中を震わせ。
深く、荒く喘いで、チカチカと発光する頭がぼうっとするのをなんとかクリアにさせる。
す、と涙を吸い上げられて、目を開きっぱなしだったことに気付き。
「せと、」
と甘い声で呼ばれて、優しく目許に笑みを刻んだままの男に合わせる。
する、と何かが揺れて、コーザが浴衣を脱いだことに気付き。いつの間にか滑り落ちていた手を、また背中に回され、熱い肌を直に感じて、不意に嬉しくなった。

コーザさま、と名前を呼びたくて、でも声は掠れて酷く小さな声にしかならず。
それでも見詰め続けていれば、両脚をそっと広げられて瞬いた。
とん、と白い膝に口付けられるのを間近で見詰め。そのまま、く、と押し当てられたものが酷く熱いことに、びくりと腰を揺らした。
「あ、」
ぐ、と押し込まれて、声を出せなくなる。ぐぐ、と更に押し込まれて、開かされていく感覚に、ぐうっと眉根を寄せた。
宥めるように何度も口付けが、目許や頬や鼻先に降ってくる。
深く息を繰り返して力を抜くようにすれば、ぐん、と一気に入ってきて、きつく目を閉じた。
一拍を置いて、灼熱感。そして、信じられないような圧迫感。
「Ah,」
喘いで、息をして。汗に濡れた身体に、きつく腕を知らず回していた。

せと、と何度も名前を呼ばれているのに気付き。くちゅ、と耳朶を吸い上げられてるのに気付いて、笑おうとした。
「――――ぁああ、」
節の蕩けた、悲鳴のように掠れた嬌声。それが勝手に口から零れる。
せと、とまた甘い声に呼ばれて、うっすらと目を開ければ。
「すきだよ、」
そう告げられて、強く抱き締められた。
どこか苦しそうな男の表情に、とくん、と心臓が痛くなり。
「……Don’ t be hurt,」
知らず囁いていた。

さら、と頬を撫でられ、微笑みかけ。
ず、と軽く揺らされて、堪らず目を閉じた。
重なった肌から移される熱が、嬉しくて。
回された腕の強さが、嬉しくて。
それだけで、もう総てが満たされた気がした――――これ以上になく、幸福で。

ぐ、と押し込まれる熱の強さに頭が追いつききれずに、ただ悲鳴を上げた―――気がする。
身体が離れるのが嫌で、懸命にしがみ付き。けれども揺さぶられて、追い上げられて、セトは何度も泣き声を上げた。
快楽を登りつめては落ち、また引き上げられて―――――Oh God, I’ll die、とうわ言の様に繰り返したような気がする。
その度に宥められるように名前を呼ばれ。口付けを降らされて、言葉を紡ぐことを忘れ、ただ深く喘いだ。
自分の身体はもはやどろどろに蕩けた熱くて重くて甘い何かに変わっていて。それでもきつく抱き締められる度に、強すぎる快楽とは別に、酷く幸せを感じた。

身体の奥に二度ほど灼熱を受け止めて、そこから焼かれて死ぬかと思い。
このまま自分が消えてもいい、と無意識に思うほどに“愛された”と感じた。
す、と意識が薄れていき、最後に笑いかけたかったけれども、そう出来たのかセトは解らずに眠りに落ちていった。
泣き濡れた頬に口付けを落とし。幸せそうにコーザがセトの涙の痕を指先で拭っていったことには気付かずに居た。




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